浄話§落語の『寝床』二種・・・

落語でおなじみ『寝床』には異なる噺があるのだそうだ。

よく知られている『寝床』は文楽(八代目)のバージョン。粗筋は……

・・・義太夫に熱を上げている大店の旦那が、店の者や長屋の住人を
集めて義太夫を語るが、広間に集められた人間はみんな寝てしまう。
それを見た旦那は怒るのだが、何故か丁稚の定吉一人が泣いている。
「義太夫がわかるのは定吉、おまえだけだ」感心感心とほめたら……
「みんな寝てしまったおかげであたしの寝る場所がどこにもない」

……というサゲである。あるいは「そこがあたしの寝床なんです」と
いうサゲもある。これがお馴染みのバージョンで、志ん生(五代目)の
『寝床』の粗筋はこういうものである……

・・・誰も旦那の義太夫を誰も聴きたがらないが、とにかく聴かせた
がる旦那に、横丁のご隠居なら耳が遠いから大丈夫だろうと送り出し
たものの、あまりの義太夫のひどさに耳の遠いご隠居も逃げ出してし
まう。逃げられてはならじと見台を抱えて追いかける旦那。とうとう
蔵の中に逃げおおせたご隠居がひと安心しているとことに、追いつい
た旦那が高いところにある窓から義太夫を吹き込む……とうとうご隠
居は“義太熱”にかかって寝込んでしまう。

というナンセンスな仕立てになっているというのだが、残念ながら一
度も聴いたことがない。ただ、ちょっと調べてみたのだが、志ん生の
バージョンには上記の他に、蔵に逃げ込んだのは番頭で、散々義太夫
を吹き込まれたショックで失踪したとある。それでサゲが「いまあの
人は、ドイツにいる」という訳のわからない“いかにも志ん生”とい
うか何というか……なのである。

そういえば現実の世界にも『寝床』の旦那を彷彿とさせるような人が
存在して、ありがた迷惑ではなく“本当に迷惑”だったりするのだ。

【去年の今日】週話§気まぐれ週末~五月場所千秋楽~

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