共話§待降節独墺旅[32]天井桟敷にて

[承前]

今回の旅行で一度だけの国立歌劇場は『アイーダ』である。指揮はマ
ルチェロ・ヴィオッティ。アイーダをマリア・グレギーナ、ラダメス
をセルゲイ・ラリンが、そしてアモナズロをホアン・ポンスと、脂の
乗った歌手が務めるという一夜。

そして我々が座るのは最上階(ガレリー)の一番右の席。ほとんど真下
にオーケストラピットが。ゆえに舞台は半分以下しか見えないという
100シリング(1000円とちょっとくらい)のエコノミー席である。

この席、音楽を勉強する人間のための仕掛けがあるのだ。手摺りに棚
があって棚には読書灯が設備されている。下向きになったライトで、
スコアなどが読めるようになっている。ちょっと遊んでみたが、光が
外に漏れない簡単な仕掛けに感心した。

肝腎のオペラの出来だが、良くも悪くも日常公演の域を出なかったと
いう記憶である。歌手の本気度も伝わってこず、まさに“一通り”や
りましたよ、という次元であったのだ。

年がら年中、熱い名演などあるはずもないし、それに個人的には『ア
イーダ』というオペラに共感を持っているわけでもない。であるがゆ
えに、より一層スカスカ感であると思ったのである。

結局のところ天井桟敷の端という席は、オペラを観るという環境とは
ほど遠いものがあったなあと思ったのだった。
                            [続く]

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