木話§ブリュッヘンという笛吹きが

ひょっとして若い人達は、フランス・ブリュッヘンがリコーダーとか
トラヴェルソを吹いていたということを知らなかったりするのだろう
か。

録音は残っているのでそんなことはないと思うが、古楽器がようやく
人口に膾炙され始めた1970年代、我々のような世代にとってブリュッ
ヘンの存在は強烈なものがあった。

大学の一般教養で音楽を講義していた教授の専門は中世ルネッサンス
音楽で、さすがにそのあたりまで遡って聴くというところまではいか
なかったものの、バッハやヘンデルといったバロック音楽の作曲家を
通してブリュッヘンの演奏を聴いたのである。

初めて聴いた時は、モダン演奏とはまったく違うアーティキュレーシ
ョンに戸惑うばかりだった。それは、モダン演奏を聴き慣れた耳には
少しばかり野暮ったくも聴こえてきたが、慣れてくるにしたがって、
それが心地よくなってくるのだった。

そうしたところに来日公演が行われることを知って、いそいそとチケ
ットを購入。プログラムはバッハを中心としたものという記憶で、そ
れなら楽しみだとばかり勇躍出かけたら、いささか拍子抜けな演奏に
何だかがっかりしたことを思い出した。

週明け、その教授の講義の後に演奏会のことを立ち話の話題にしたら
“ああ、彼は録音を聴くほうがいいみたいですよ”というニュアンス
の反応が返ってきたのだ。まだまだ、そういう事情に疎かった時代。

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