添話§死者に励まされて

大地震の犠牲者が一万人を超えたのはいつのことだったか。生き残っ
た我々は、死者のためにもこの先を生き抜いていかなくてはならない
宿命にある。

多くの人間が予期しない不本意な死を迎えてしまったことに生き残っ
た我々は語るべき一言もない。さらに死者を満足に葬ることすらでき
ないという現実もあるのだ。

だからこそ生き残った我々が挫折するわけにはいかない。多くの人々
の死を心に留めて進んでいかなくてはならない。

ツイッターのタイムラインを眺めていたら、一周忌の命日に父親の夢
を見たという、それも穏やかに話をしたという……そんな呟きの主は
“おかげで死者に励まされた”のだった。

我々も物言わぬ死者に励まされたいと思った。先立ってしまったとは
いえ、様々な記憶として残っているそんな断片から、まだ生きていた
時の彼らや彼女らの言葉や笑いかけてきた表情……そういった過去を
思い起こすこともまた、死者への手向けと同時に我々の眼を前方へと
向けてくれるのではないか。

死者もまた、悼まれるばかりでは浮かばれまい。こうして生きている
我々に還元されることで、死者を顧みることができるのではないか。
一人の呟きを読みながら、死者に励まされることもあるのだと思える
ようになったのである。

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