祝話§二月大歌舞伎昼の部~勘九郎~[上]

[承前]

充実した昼の部を堪能してきた。演目は3本で『鳴神』と『土蜘』そ
して天衣紛上野初花から『河内山』である。

まず『鳴神』は橋之助の鳴神が“うぶ”な愛敬もあり、雲の絶間姫を
演じた七之助とのコンビもいい塩梅で“ああ、こういう狂言なのだっ
たなあ”と、おそらく3回目くらいのはずだが、ここにきてようやく
芝居の全貌をつかむことができたのだった。

そして六代目勘九郎の『土蜘』である。つまり勘九郎の踊りは、高性
能で直線性能の高い今時のシャープな車の趣とでも言えばいいのでは
なかろうか。

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古怪なる存在が踊っているのは、古くは先代の松緑達も同じことなの
だが、勘九郎が舞うところの僧智籌には“今”というものが、色濃く
反映されているような気がするのだ。古怪を表現しながら“今”を感
じるという不思議であり。これは勘九郎の父親世代では為し得なかっ
た表現のように思うのだが、そのあたりをさらに具体的に掘り下げで
感想を書き連ねる力まではなかったりするのが悔しくもあり……。

間狂言で番卒を務めたのは父親の勘三郎、吉右衛門、仁左衛門という
まさに“ごちそう”が勢ぞろいして、前シテと後シテの重苦しい緊張
感をやわらげてくれたのだった。こういう贅沢こそ襲名披露なのだ。

もしもこれを、得意にしていた先代松緑が観たら、さぞや喜んだろう
と同時に羨望すら覚えてしまうかもしれない……それほどの勘太郎の
充実ぶりなのである。そして、二十代、十代といった役者の卵達にと
っては、ここにおいて一つの大きな目標となったと言えるだろう。
                            [続く]

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