連話§ワタシの酒肴[64]板わさ

[承前]

蕎麦屋で酒を呑む時、3回に一回は板わさを頼んでしまうような気が
してならない。理由の一つとして、特に酒肴の並びが寂しい店では、
注文するのに事欠き、少ない選択肢からついつい板わさを選んでしま
うのである。

店の中には、高そうなと思しき蒲鉾を出すところもあるのだろうが、
こちとら蒲鉾のうまいまずいは判別がつかないので、何を食べても似
たようなものである。高級そうな蕎麦屋では、おろした本山葵をもっ
たいぶって添えてきてくれるが、辛味の抜けてしまった古い山葵を使
うくらいなら辛味の効いた練り山葵でもいいのにと思う。

中には山葵漬を添えてくる店もあったりして、それはそれ気が利いて
る部類である。ただ、これもよしあしで気が抜けた山葵漬をもらって
も、味のない茎山葵を酒粕で和えただけの無意味な存在でしかない。

結局のところ店の工夫といえば、せいぜい切り口に細工をして付加価
値を高めるという、酒肴としては何とも立場が微妙だと考えるのだ。
酒肴の花形とか主役とか、そんな地位に上り詰めるのは無理そうだ。

そもそもも蕎麦屋の酒肴は手をかけるものではなく、蕎麦種を流用し
て提供するが昔ながらの店の大勢で、刺身を出したり湯豆腐を出すな
どとは、酒も売りたいと目論む類の店というなのである。
                            [続く]

《酒肴のトピックス一覧》

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック