患話§中村勘三郎 最期の131日

中村屋一周忌の日に発売された『中村勘三郎 最期の131日』を慌しく
読了。

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基本的に闘病記の類は読まないのだが、気にかけていた勘三郎のとい
うことで読んでみた。

突発性難聴に始まり、精神科医から鬱病と診断され、納得がいかずに
転院を繰り返したこと。その後、食道がんが見つかって手術を行い、
経過は良好だったものの、ふとした誤嚥が原因となって帰らぬ人とな
ってしまった……その半年ほどが一冊にまとめられていたのである。

読了しての感想は、夫婦ともどもテンションが高かったのだなという
ことが第一。ただ、そのテンションの高さが、特に鬱と診断されて何
度か医師を変えたあたりで仇となってはいなかっただろうかと気にな
ったのである。医師を変えるにせよ、処方された薬をすり替えて飲ま
せていたというのもかなり危険で乱暴な話ではないか。

勘三郎のような立場の人間であれば、高名な医師に依頼することは難
しいことではないのだが、とりわけ精神にまつわる病気の場合、もっ
とじっくりと腰を据えて医者と対峙するべきだったのではと感じた。

読んだとおりであるとするなら、論外な精神科医に診断を仰いだとい
う件もあったりした。一概に断定はできないが、精神科医とのコミニ
ュケーションのあり方は何とも難しいものである。

誤嚥に始まって臨終に到るまでの経過は、医師と家族のやり取りが具
体的かつ克明に記録されていて、それに関しては将来の参考になるこ
とも多いのではと思われたし、読む価値が大であろう。ただし、彼と
同等の治療を受けられるというわけでないのはもちろんのこと。

一通り読み終わって、勘三郎という役者が身を削って突っ走っていた
ということが痛いほど理解できたのだが、自分を恃み過ぎた結果でも
あったのだ。

以前読んだ勘九郎時代の本の中に「自分は通常よりも肺が小さくて、
それが弱い部分だ」という記述があって、長年自覚していた肉体の問
題が命取りになったのだなあとやりきれなさを抱きつつ本を閉じた。

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