連話§ワタシの酒肴[77]カツオのたたき

[承前]

去年あたりまで“カツオのたたき”は苦手な刺身だった。マグロの赤
身が、どちらかといえばすっきりさっぱり系で好みであるのに対し、
カツオの刺身はヌメっとした食感がどうしても好きにはならなかった
のである。

それが、人に誘われて呑みに行った土佐料理の居酒屋で出されたカツ
オのたたきを食べて印象が変わってしまったのだ。

それまで食べていたカツオは何だったのかというほどに、歯触りとか
ヌメり感といった味わいの全体像が一新されたのである。このように
して人間は、食わず嫌いが克服できることもあったりするのである。

食べたカツオのたたきは、土佐の高知独特の藁焼きと呼ばれるもので
焼いた藁がカツオに香ばしさを与えてくれる。食べる時にはポン酢の
類を使わず、軽く塩をまぶした後は、にんにくスライス、刻み葱、山
葵といった薬味で楽しむのだ。

やれめでたや、カツオのたたきが克服できたぜと自分をほめるのは早
い。そうではなく別の居酒屋のたたきが食べられるかどうか、この先
微妙であろうという想像もできるからである。
                            [続く]

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