雅話§百人一首考[13]~つくばねの~

[承前]

陽成院(ようぜいいん)

筑波嶺の 峰より落つる 男女川
恋ぞつもりて 淵となりぬる


万葉集で恋の歌は“相聞”という分類をされていたが、古今和歌集以
降の勅撰和歌集では“恋歌”と、そっけないというか直截的になって
しまった。

相聞は、お互いに相手の消息を聞きあうという意味だが、その響きは
気遣いに満ちていて体温が感じて取れるようだ。そんな万葉の選者が
いた奈良時代から150年余、貫之が古今集を選んだ平安時代の人々
が“ドライ”になったということが考えられるのだろうか。

……万葉集が素朴なと言うなら、古今集は雅という受け留め方をして
いる我々にしてみたら、奈良時代と平安時代の人々の心のありようが
どうだったのかということを推し量るのは、とても難しいのである。

陽成院のこの歌も『後撰和歌集』に収められ、後に百人一首にも所収
されているが、昔も今も、惚れてしまって募る気持ちに何の変わりが
あるものかというところで、はてさて陽成院くんが恋焦がれた相手と
いうのはいかなる女性だったのか、容姿を知ってみたいではないか。
                            [続く]

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