雅話§百人一首考[22]~ふくからに~

[承前]

文屋康秀(ふんやのやすひで)

吹くからに 秋の草木の しをるれば
むべ山風を 嵐といふらむ


ずっと“ぶんや”と読んでいたが、実は“ふんや”なのであるぞよ。

[15]を過ぎたあたりから、どんどん怪しくなってきた百人一首考だが
ところどころ切れ切れに記憶の海を漂っている歌が現れてくるのだ。

これも“むべ山風を”がなかったら記憶の海に漂うことなく、記憶の
水底に沈んでいたかもしれない。下の句が“むべ”なる言葉で始まっ
たことが我が身に強い印象をもたらしたことは間違いのないところ。

“むべ”が、なるほどという意味であるとか“むべなるかな”という
使われ方をすると知ったのは、この歌を眼にした時からさらにさらに
後の話である。

今になって、六歌仙の一人である文屋康秀の一首を読んでみれば“情
景そのままではありませんか”という、ちょっと拍子抜けしたような
感想を持ってしまったのだが……。
                            [続く]

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