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zoom RSS 雅話§百人一首考[37]〜しらつゆに〜

<<   作成日時 : 2015/06/15 00:00   >>

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[承前]

文屋朝康(ふんやのあさやす)

白露に 風の吹きしく 秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける


大学生だった4年間の夏休みは、尾瀬の山小屋でアルバイト三昧なの
だった。毎年50日から60日というもの、朝早くから小屋の雑事あれや
これやをこなしたのだった。

そんな仕事の合間に、横目で尾瀬ヶ原や至仏山、尾瀬沼に燧ヶ岳が夏
から秋へと移ろっていく様子を眺めることができたのだ……朝、昼、
夕方と刻々変化する自然の中に身を委ねていることこそが、得がたい
贅沢な体験だったのである。

どの時間も好きだけど、一つだけというなら迷わず早朝を挙げたい。
少しずつ消えていく朝霧を追って木道を歩くと、傍らの草々に朝露が
ついていて、その朝露一つ一つに生まれたばかりの朝の太陽が反射す
るのを見回し、10分足らずの散歩から小屋の仕事へと慌しく戻るのだ
った。

初夏の朝露、盛夏の朝露、そしてアルバイトが終わる頃には初秋から
秋へと趣を変える朝露……様々な表情の朝露に心を留めたのだ。

文屋朝康が六歌仙の一人である文屋康秀の息子という以外には、何の
とっかかりもない一首だったので、こんな思い出話でお茶を濁すこと
になってしまった。
                            [続く]

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