雅話§百人一首考[46]~ゆらのとを~

[承前]

曾禰好忠(そねのよしただ)

由良のとを 渡る舟人 かぢを絶え
ゆくへも知らぬ 恋の道かな


またも、いにしへびとの恋の悩みのようであります。恋歌のほとんど
は“うまくいってラブラブじゃん!”みたいなものは、あまり見かけ
なさそうな感じで……うまくいってなかったり、片想いでやきもきし
ていたり、焦らされることにイライラを募らせたりの嘆き節である。

今回の「由良のとを」は、さしずめ先行き不透明な恋の道への不安と
いうところであるだろうか。櫂がなくなれば舟の行く末は誰にもわか
らないというあたりと、恋とを並べているわけだが、恋なる舟の櫂に
あたるものは、はてさて何であるのだろう。

それは、例えば己の“心の眼”のようなもので、心眼が曇ってしまえ
ば、恋の道筋など見えにくくなってしまうに決まっている。だから、
恋は盲目だなどと……まあそういう結論ということにしておこうか。
                            [続く]

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