雅話§百人一首考[72]~おとにきく~

[承前]

祐子内親王家紀伊(ゆうしないしんのうけのきい)

音に聞く 高師の浜の あだ波は
かけじや袖の ぬれもこそすれ


アラサーのプレイボーイが70歳のおばさまに詠んだ恋の歌に対して、
彼女の返歌がこれである。ちなみに、プレイボーイが詠んだ歌は……

人知れぬ 思いありその 浦風に 波のよるこそ 言はまほしけれ

……というものである。これは“艶書合(けそうぶみあわせ)”と呼ば
れる、恋歌を詠み合う会でのことだから、本気の恋歌というよりは、
もっと軽口のようなものだったかもしれず、だから70歳のおばさまに
ちょっかいをかけてみたということのようだ。

というわけで、彼女の見事な返歌に、会の参加者が驚嘆したとある。
それほど歌詠みであるから、この程度の遊びは造作もないことだった
であろう。

それにしても当時の70歳などとは、とんでもないご長寿と見えたこと
と想像され、どのような会話が交わされたものかと思うのである。
                            [続く]

《百人一首のトピックス一覧》

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック