雅話§百人一首考[83]~よのなかよ~

[承前]

皇太后宮大夫俊成(こうたいごうぐうのだいぶとしなり)

世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る
山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる


9月下旬、尾瀬を歩いた最終日の朝早く、裏燧林道へと歩き始めたら
数十m先の湿原の草むらでガサゴソという音がした。小動物ではなく
それなりの大きさの存在ということはすぐわかり、一瞬“熊?”かと
身構えたが、どうやら鹿だったと判断し前進を再開した。

時季的には、冬眠を前に餌を十分に食べようとする頃合いで、それだ
けに用心が必要だとあったが、せいぜい威嚇しないとか、後ろを向い
て一目散に走って逃げないとか、そんな程度のことしか対応できず、
そもそもクマさんの縄張りを侵害しているのは人間たる我々だから、
なるべく刺激せずに、鉢合わせしなければなあと願うばかりである。
鹿の話なのに、熊の話まで紛れ込んでしまった気がしないでもない。

詠み人に皇太后宮大夫俊成とあって、誰かと思っていたら藤原俊成で
あった……定家の父親ではないか。知らない時は、こういうあたりも
見過ごしていたのである。
                            [続く]

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