雅話§百人一首考[93]~よのなかは~

[承前]

鎌倉右大臣(かまくらのうだいじん)

世の中は 常にもがもな 渚こぐ
あまの小舟の 綱手かなしも


鎌倉の鶴岡八幡宮で公暁によって殺された源実朝のことである。彼が
殺害されたことで、鎌倉幕府の源氏将軍は途絶えることとなった。

もう43年も前のこと、予備校通いするのに東京で暮らし始めた年の秋
『実朝出帆』という芝居を観た。将軍にはなったものの、夢見る実
朝は帆船を建造して大海原へと旅立つことを目論んでいたが……とい
う脚本である。

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この歌を読みながら、40年以上も前に観た芝居の中の実朝を髣髴とさ
せるようだと思った。

公暁に殺された時、実朝は27歳。それに先立つ25歳の頃に渡宋を企て
実際に船を建造したものの、その唐船は浮かぶことのないまま、渡宋
の計画は破綻したという、これが史実なのである。

いささか妄想癖もあった実朝は、歌にあるように常に遠い眼をしてい
たのだろうか。
                            [続く]

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