贋話§現物を撮影しても印刷物には

会社で最初に配属されたのはグラビア誌の編集部だった。まだ当時は
フィルムカメラの全盛期で、撮影を担当したカメラマンが粗選びした
ポジフィルムを編集担当者が誌面に使う“一枚”を選んでいた。

一度選んでしまえば、それでおしまい。だからカメラマンと編集者の
眼は確かでなければならなかったのである。

そうであっても。特に化粧品のような物撮影で、その製品の色を正確
に再現することは難しく、ほとんど不可能だといってもいいのだ。例
えば口紅の色などがそうで、対象となる口紅を撮影しても、印刷では
同じものとして再現されるわけではない。

誌面で“その製品の色”として再現されることを逆算して、時には同
様の製品を撮影して該当する製品の色だということもしていたのだ。

今はもうデジタルカメラの天下で、撮影した写真をパソコン内で色修
正して本番写真として使うことは既に日常化となった。

生ものを扱う料理の写真だって似たようなもので、茹で立ての蕎麦な
どは、あっという間にみずみずしさが失せて乾いてしまうのでスピー
ド勝負だし、焼いた肉のうまさを出すために油を塗ってみたり、様々
な工夫をして“らしく”見せようとしていたのだ。言わばフェイクで
ありやらせでもある。

“後でスタッフがおいしくいただきました”などという料理ばかりで
ないのは言うまでもない。

昨今で困るのは、ネットや送られてきたカタログで衣服の取り寄せを
する時である。どうしても現物の色とカタログの色は違ってしまうか
ら、それを見越して無難な色の物を買うことになる。特に微妙な色合
いは要注意で、時に見立て違いが起こることもないことはないのだ。

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