徨話§ベルリンとアルプス[12]トリスタン~下~

[承前]

というわけで演出について幕ごとにざっと簡単におさらいしておく。
1280px-Berlin_Opera_UdL_asv2018-05.jpg
第1幕:大会社が所有する豪華クルーザーの船内。トリスタンは大会
社の支社長。大会社CEOであるマルケが娶るイゾルデを伴って、名
誉の帰還である。
↓ベルリン国立歌劇場のトレイラー

ブランゲーネが毒薬を媚薬とすり替えてトリスタンが飲むと、笑いが
止まらなくなる。イゾルデと二人で笑い合っているところにマルケが
登場するが、なおも笑い続ける二人……というところで幕。

第2幕:大会社のパーティ会場。その一室で密会を重ねるトリスタン
とイゾルデだが、当然ながら発覚して……

第3幕:トリスタンの居室だが、どうもトリスタンが傷を負ったよう
には見えず。疲れ果てて寝たり起きたりしているようにしか見えず。

そして、イゾルデが到着した時も命が尽きるというより、眠りに落ち
てしまったとしか見えなかった。

そうしてイゾルデが愛の死を歌っている間、CEOマルケに寄り添っ
ているのはブランゲーネなのである……どうやら痴れっと後釜に収ま
ってしまったようなのだ。

愛の死を歌い終わったイゾルデは、トリスタンが横たわるベッドに近
づくと、セットした目覚まし時計を置いて終わる。

どうやらこの演出では、マルケが嘆き歌うのとは真逆に、誰一人とし
て死ななかったように思われた。トリスタンは眠っているだけ。それ
を示すのが目覚まし時計ということなのか。

……奇妙な演出というか、高級クルーザーに始まるあたりは許容して
も、2幕から3幕へと進むにつれて、どんどん演出が尻すぼみになっ
ていったように感じた。せっかくの、歌舞伎で言うところの大顔合わ
せが実現したのに、眼にする舞台がこんな有様では残念でならない。

2日前に観たコーミッシェオパーの『ばらの騎士』を小劇場の緻密な
アンサンブルと書いたが、ベルリン国立歌劇場の『トリスタンとイゾ
ルデ』はまさに大歌舞伎の趣きということだろうが、音楽の充実とは
裏腹に、?マークが付きまくった舞台演出なのだった。

そうしてベルリンの音楽シーン探訪の旅は、金曜日のベルリンフィル
定期演奏会で幕を閉じるのだ。
                            [続く]

《オペラのトピックス一覧》

この記事へのコメント