憬話§このたびの旅[64]ミュンヘンラーメン

[承前]

旅行中の街歩きは毎日歩数を稼ぐことができるので麗しい。平均すれ
ば一日一万歩に迫る勢いだったりもする。そのおかげで適度に空腹に
もなってくれるのだ。

散歩も終わりに近づいて陽も傾いてきた。歩いたおかげで適度に胃に
スペースができたようで、二人とも晩飯を食べる気が満々になった。
だからといって、ドイツ料理は遠慮したいという共通認識のもとに、
一軒のラーメン屋が頭に浮かんだ。イザール河畔の遊歩道を南下して
いて、ちょうど店の近くに差し掛かりつつあった。

少しばかり薄暗くなった歩道の先に“ラーメン”と書かれた赤い提灯
が眼にも鮮やかで、いそいそと“S”に入った。鰻の寝床のような細
長い店のカウンターに腰掛ける。恰幅のいいの主人が愛想よく迎えて
くれ、それだけで日本に戻ったような錯覚に陥ってしまうのも、いと
あはれなりけるか。

残念ながら樽生ビールはなく、瓶のラガーを一本頼みつつメニューを
眺めて“葱チャーシュー”と“枝豆”を注文……。

をを! 日本の居酒屋!

・・・ミュンヘンで葱チャーシューだもんなあ。こうしてまったりと
ドイツでビールを呑みたいという切なる願いが、ン十年の旅行の中で
初めて実現したのである。何と大げさなと言わば言えという居直りに
似た心境でもあった。

そして締めのラーメンは、同居人が醤油を注文。ラーメンの前にもう
1杯とヴァイエンシュテファンの白を1本。それを呑み終えつつある
頃合いで味噌ラーメンを頼んだ。

これこそまさに“日本人の予定調和”というものである。これでもう
少しスープが熱ければとか、そんなことなど吹けば飛ぶ枝葉末節なの
である。

すっかり満足した我々は、勘定を済ませつつ次の計画を思いついたで
あるよ。
                            [続く]

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