芝話§平成中村座十二月大歌舞伎昼の部

昼の部は朝11時の開演で『菅原伝授手習鑑』から“車引”“賀の祝”
“寺子屋”の三本立て。我が家を出たのは9時前で、新宿に下りたと
ころで弁当のおにぎりを確保しつつ地下鉄で浅草へ。

東武浅草駅あたりで地上に出て歩き出すと、進行方向にスカイツリー
が青空に向かって聳え立っていた。それほどの距離で対峙するのは初
めてのことで“感動しにくい性質”の同居人もさすがに驚いていた。

さらに言問橋を越えて隅田公園のテント小屋に着いたのは30分前の開
場時間をちょいと過ぎたタイミング。

というわけで最初の演目は『車引』である。菊之助の桜丸、勘太郎の
梅王丸に、彌十郎の松王というもの。さすがに先年観た吉右衛門の梅
王、芝翫の桜丸という濃厚さには及ばないが、何より勘太郎のダイナ
ミックな荒事に惹かれてしまう。ただし、この日は梅王ばかりが目立
ってしまうような印象もあった。

『賀の祝』を観るのは二度目。今回観た中村座全体の印象としては、
ずいぶんサラサラした舞台であるということだが、それが『賀の祝』
で顕著に現れたような気がするのだ。皮肉なことに、そんな舞台のお
かげでこの段の概要をつかむことはできた。

大歌舞伎と銘打ってはいても大看板は勘三郎のみで、彼と花形との差
を埋めるためにもう一人二人揃えてほしいところではある。

そんな塩梅で、だから勘三郎の松王に期待した『寺子屋』だったが、
病気復帰から2か月目の舞台は、いささか物足りないものだった。意
外なほどに小ぢんまりとした松王に、台詞のハリもなくという、完全
復帰にはまだまだという気がした。

勘三郎が他の出演者に合わせたとかそういうことではないと思うが、
ついこの間観た吉右衛門の圧倒的な大きさからすると、かなりの物足
りなさが残ってしまったのだ。菊之助初役の源蔵は、台詞の生っぽさ
が時折ありはしたものの、次代の菊五郎としてやっていかなくてはな
らない役を無難に務めていたと思う。

終演後は雲一つない空の下、長くなった午後の日差しを浅草から日本
橋へと地下鉄に乗ったのだった。

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