雅話§百人一首考[57]~めぐりあひて~

[承前]

紫式部(むらさきしきぶ)

めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に
雲がくれにし 夜半の月かな


和泉式部に続いて紫さんだが、親戚とかそういうわけではない。名声
は『源氏物語』をものした紫さんに軍配はあがりそうだし、前回書い
たように、和泉さんの恋愛遍歴が奔放だと批判したのも紫さんだった
わけである。

それでは紫さんのほうはどうだったのかといえば、これが身持ちが固
かったらしいのだ……“貞女二夫にまみえず”という考えを持ってい
たかどうかはともかく、最初の夫に死なれてからは独り身を通したと
いうことのようだ。

それでこの一首も“めぐりあった”のは、恋人ではなく幼馴染の女性
であったというのも、紫さんらしいと言えるのだろうか。そんな短い
邂逅を“雲隠れした月”に見立てた描写は巧みなものだとは、繰り返
して読んでの感想である。

長編小説家にして歌人の紫さんはスーパー・キャリアウーマンだった
けれども、彼女の繊細なところは、父親の赴任先である越前の国に同
道したものの、都会の生活が忘れられず、一年で単身京都に戻ってし
まったが、ある意味シティ・ガールということでもあったのだろう。
                            [続く]

《百人一首のトピックス一覧》

"雅話§百人一首考[57]~めぐりあひて~" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント