天話§三島由紀夫九十歳

1970年11月25日、三島由紀夫が割腹自殺をした日である。あれから45
年が経ち、昭和と年齢がシンクロしていた三島は、生きていれば90歳
になる。

人は“この人が何歳まで生きていれば……”というたられば話をする
ことは珍しくないが、そればかりはいくらやっても詮のないことだと
思う。

もちろん、生きたことでさらに大きな業績を残したかもしれないし、
その逆ということもある。そういったあれこれを想像するのもまた、
我々の性(さが)ということではある。

三十代で死んでしまったモーツァルトなど、想像の対象になる飛び抜
けた存在なわけだけれど、どんなに頭を働かせても“単なる想像”の
域以上に広がることなどは、まずもってあり得ない。

早世を惜しむ我々にとって、それは残念ながら寿命と諦めるしかなく
て、三島が『豊饒の海』以降にさらなる傑作をものしたかもしれない
とか、モーツァルトがレクイエムを完成させた後、新しいステップに
踏み出していったかも……などと想像することは、まさに“死んだ児
の年を数える”行為でしかないのだ。

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