懐話§昭和三十年代~物干し台~

[承前]

生まれた家は、町中で3軒連なった長屋だったとは何度も書いている
ことである。だからというわけでもなかろうが、2階家に憧れていた
のだ。ただの2階家ではなく、そこには物干し台が付いていなくては
ならなかった。

あれがものすごく羨ましかったのである。そもそも高いところから景
色を見るのが好きだったりするから、それで少しでも高いところから
見下ろしたかったのである。家によっては、小型の天体望遠鏡などを
持ち出して、お月様を眺めてみたりという様子も見かけたのだ。

それに、すのこ板張りの物干し台は、何となく気持ちもよさそうでは
ないか。せいぜい3畳くらいの広さであるにしても、何となく風通し
はよさそうだと思われるし、陽が沈んだ夕方に、物干し台で寝転んで
というのはやってみたかったこと。

だから今でも、ベランダではなく、物干し台のある家を見かけると、
羨ましさが先に立ってしまうのだ。

そういえば、いつの頃からだっただろうか、たぶん建売住宅が優位に
立ったあたりから物干し台のある家を見かけなくなったような気がす
る。あるいはひょっとして、建ぺい率とかの問題だったりして、実は
かつての物干し台は“お目こぼし”されていたりしたのだろうか。
                            [続く]

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